タイの麺料理-その12-

「クァィティァォ・ヌア」

タイ流のビーフ・ヌードル・スープは、牛骨ベースのスープを使っています。そのスープとしては、香りがよくて澄みきっているもの(ナム・サイ)、乾燥したスパイスを使って比較的濃めで、ほのかな甘さと香りを引きたたせるもの(ナム・コン)、牛の血を加えた濃いめで栄養価の高いもの(ナム・トク)があります。
この料理は、ほとんどの場合、標準的なタイのライス麺で提供されますが、ライス麺の代わりに、「カオ・ラオ」(麺でなく、ご飯が提供されるもの)が出されることがあります。
この麺には、あらかじめボイルした牛肉のスライス、柔らかな牛肉の蒸し煮の塊、内臓の蒸し煮(胃、腸、肝臓、心臓)、胡椒の効いた牛肉の肉だんごが付け加えられます。お椀には、揚げたガーリック、ガーリックオイル、白胡椒、粗く刻んだ中国セロリが盛りつけられ、通常の麺の調味料が添えられます。ビーフ・ヌードルに特有なものですが、新鮮でスパイシーなチリペパー(ほとんど焦げ目がつくほど深炒りしてから粗挽きしたもの)かフルーツ・ビネガーが添えられます。この調味料はスープに直接足されるのでなく、ダークな色合いとスパイシーさ、それに酸味の香りを伴ったソースとして、牛肉の味を引き立たせます。

「クァィティァォ・ルア」

ほぼ間違いなく、タイで最も風味が濃厚な麺料理として認められている「クァィティァォ・ルア」は、「ボート・ヌードル」と別名で呼ばれています。この料理は、バンコックとタイ中部を結ぶ運河を定期的に往復している小さなボートから直接提供されていることから「ボート・ヌードル」の別称がつきました。
今となっては、この「ボート・ヌードル」を提供するほとんどのレストランは陸上にありますが、多くの屋台の業者は廃船となった小舟の上でこの「ボート・ヌードル」作り続けていて、その配達エリアにこのヌードルを提供しています。
「ボート・ヌードル」は、プチサイズのお椀の形で、少量のスープ(豚肉か牛肉)、麺(主にライス麺、ときには卵麺)、あらかじめボイルした肉のスライス、肉と内臓(肝臓、胃、心臓)の蒸し煮、ミートボール、あらかじめボイルした「パッ・ブン」(パリパリ感のある、水辺に生える植物、英語圏では夜明けの栄光、エンツァイとして知られています)が組み合わされます。
スープは、牛肉ベース(少し黒っぽい、濃いめで香りが引き立つ)と豚肉ベース(淡い色合いで、甘みを感じる)のバージョンによって異なります。好みでよく選ばれるのは「ナム・コン」ですが、そのスープは、ハーブ(業者は大麻草も入れていると思われますが)と乾燥させたスパイスを加えているため少し黒っぽい色合いになっています。「ナム・トク」は、そのスープに血を混ぜて濃くしています。
オーダーすると、すでにMSG、砂糖、チリ・パウダー、魚醤そしてチリペパーかビネガーの調味料であらかじめ味付けされていて、牛脂かラードで揚げられたガーリック、ときには刻みネギかシラントロが添えられます。
「ボート・ヌードル」には、一般的な麺調味料と「プリック・ナム・サム」(小さめの新鮮なチリペパー・リーフを焦げ目がつくほど深炒りしてから粗挽きし、ホワイト・ビネガーにつけ込んだもの)が添えられます。
この料理は、好みによってタイ・バジル、モヤシが提供され、小さな小袋に入れた深炒りした豚の外皮もよく好まれて食べられています。