タイの麺料理-その9-

「カイアム・イー」

タイの最も希少価値のある麺料理の一つとして「カイアム・イー」があげられます。中国・潮州地方の方言で「丸形の、シャープな」を表わす話し言葉で、米粉(多分、キャッサバイモまたはもち米も含まれています)で作った丸っこい手ごねの麺をいいます。
タイでは、この名前は大まかに言って、麺と少し濁った豚骨味のスープ、豚肉が主になっている素材(豚のミンチ肉の柔らかめのパティ=それは少し甘くて脂身の多い豚肉を蒸した塊ですが、それに豚の心臓と腎臓、カリカリ感のあるイカ焼き、大根のみじん切りが含まれています)を組み合わせたものを総称して呼んでいます。
この料理は、魚醤を一振りかけ、白胡椒を少々振って味付けをして、刻みネギとガーリックオイルを加えて調えます。好みによって、「バミー」と同じように、砂糖、スライスした辛みのまろやかなチリペパーの酢漬け、乾燥させたチリ・フレークを加えます。
とは言っても、ほとんどの業者は乾燥させたチリ・フレークを油で揚げたものを使って比較的マイルドな味付けをして提供してくれます。

「クアイ・ジャップ」

「クアイ・ジャップ」は間違いなくタイの豚骨味の麺として最高のもので、バンコックのチャイナタウンの定番料理であり、胡椒のピリッと効いた豚肉と臓物、それに豚骨味のスープで味付けされた栄養価の高い中国・潮州地方発祥の麺料理です。
この麺料理は、幅広の「カーペット巻き」のライス麺として提供されるのがほとんどですが、時には「クァィティァォ・シャンハイ(綠豆粉で作った半透明か薄緑色の麺)」で提供されます。
「クアイ・ジャップ」には二種類の麺料理の方法があります。一つは「ナム・サイ」で「澄んでいる」の意味を表しますが、豚の背骨から作った軽めのスープを使っています。もう一つは「ナムコーン」で「濁っている」の意味を表しますが、このスープの濁りは、タピオカ粉を加えて少し粘り気をもたせ、5種類のスパイスパウダーで味付けしているところからきています。
この二つとも、豚肉をベースにした素材で味付けされていますが、この様な素材には、カリカリに揚げた豚の脇腹肉、刻んだ内臓(胃、心臓、肝臓それに鶏かポーク・ブラッド)が含まれています。いくつかのバージョンでは、干し椎茸、木綿豆腐、ゆで卵が使われます。
「クアイ・ジャップ」には、刻みネギ、シラントロ、白胡椒、時には深炒りしたバン生地などが添えられ、通常の麺の調味料が提供されます。

「クアイ・ジャップ・ユアン」

「クアイ・ジャップ・ユアン」は、タイ東北部と圧倒的に関わりがありますが、とりわけメコン川流域に接する地方と関わりが深いと言えましょう。
このユニークな麺料理は、ベトナムから伝わってきたものに間違いありません。「クアイ・ジャップ・ユアン」はベトナムのものと同じものでありません。長太くて丸形の麺は米粉、タピオカ粉からできていますが、ときおりもち米の粉を加えます。このあたりはベトナムの「バン・カン」と似かよっています。
ほとんどのタイ麺料理と違い、ここでの麺は、直接スープ(このケースでは、胡椒を効かした豚骨スープ)に入れて調理されます。スープに振りかけたタピオカ粉は、スープに濁りと少しの粘り気を与えます。
麺とスープには、スライスしたベトナムのポークソーセージ、蒸した豚肉か骨付きバラ肉、ときにはウズラの卵、椎茸を加えます。そして炒り上げたパリパリのエシャロットと刻みネギが添えられます。
「クアイ・ジャップ・ユアン」には、通常の麺の調味料、それに乾燥させたチリ・フレークを油で揚げたものが添えられます。